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【読書】同時通訳者のここだけの話:関根マイク 著

09/23/2020

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はじめに

学術論文の客観的妥当性

英語が得意ではない人にとっては、国際会議などでの通訳はとてもありがたいものです。

学術論文は誰が読んでも同じように理解できるような客観的な妥当性を持つとされます。
トレーニングされた人が読めば、多くは同じ結論にたどり着きますが実際は、その論文を読んでの結論は真逆となることも稀ではありません。
そこには、自分自身の感情や私情というものが存在するからだと思います。

ODAN

論文に感情はあるか

論文には感情が無いか、といわれれば半分同意ですが、半分は感情があるような気がしています。
人が書く以上は、論文にも私情が挟まれます。
通常、医学的研究は根拠の創出のために行なわれます。
しかし、ある研究を行っているグループでは、自分たちの行っている研究結果を支持するように気持ちが働くのは当然の摂理だと思います。

ODAN

通釈者の役割

そんな学術論文に例えた、人の発言の感情部分を和らげてくれるのが通訳者の役割の1つです。
この本を読んで感じたことは、通訳がいることで直接話をするよりも、スムーズに事がうまくいくという事でした。

メディアを介した失言

政治に限りませんが、メディアの世界では、ときに失言が大きく取り沙汰されます。
あの政治家や芸能人が、あんな事を言っている、どういうことだと言うやつです。

最近では、ある政治家が潰瘍性大腸炎という病気を持つ方に対し「大事なときに体を壊す癖」があるとツイッターにあげていました。
本人は、そこまで大きなことをつぶやいたつもりは無いのでしょう。
しかし、特にこの病気を持つ方やこの病気を治療している医療者にとっては、とても残念な気持ちになったのは事実だと思います。

ODAN

通訳のワンクッションはとても重要

これは、ツイッターでの話ですが、このような事象が直接の会話で行なわれたら、受け手によっては大きな怒りを憶えることでしょう。
そのため、通訳というワンクッションが大きな意味を持つことになります。
通訳がいなくても、会話だけであれば可能です。
しかし、その会話(会談)では国を背負っている人達の会談の場合もあります。
その一言が、各国の先行きを担う可能性もあります。

通訳者もクライアントの目的に応じて、役作りを変える

通訳を行う対象が何を目的に、その会談(など)に挑んでいるのかということも非常に重要です。
友好関係であれば、より親密さを前面に出すような通訳を行なわなければなりません。
逆に、北朝鮮拉致問題のように国の重要な局面では、強く出なければならない場合もあります。

つまり、これらの予習を通訳者は行い、ある程度筋書き通りに結論を導くということも時には、仕事の主要な位置を占めることになります。

医療者のコミュニケーション

通訳を介さない、医療者と患者さんとのコミュニケーションはどうでしょうか。
医療の専門家である医師と、多くは医療の非専門家である患者さんに分けられます。

医療者は当然プロフェッショナルですので、沢山の同様の病気をみています。
ということは、同じ事象をもつ数百人や数千人、時には数万人に1人の患者さんを診ることになります。

患者さんにとっては初めての経験

当然ですが患者さんは、対象のお医者さんが何万人同じ病気を診てこようが、初めての経験です。
医療者の説明で、理解が悪いと感じる場合は、その説明が本当に正しいものであったのかどうかを、しっかりと振り返るべきです。

そして、患者さんと共に考え、患者さんにとって最善の方法を医療者として提示し、その結果としての実践を行うのが医療の主要な在り方になります。

医療者の最善と患者さんの最善は異なる

医療者が考える「最善」と患者さんが考える「最善」は異なる場合があります。
その際の医療者は、「この治療法がこんな根拠があって正しいからこの治療法を受けてください」というのは、倫理的に少し違うということになります。

全ては合意形成の基に成り立つ

医療における事象は、全ては合意形成の基に成立しています。
つまり、合意のない検査や治療は基本的には、ありえないということになります。

Sheared decision making

医療者の最善と患者さんにとっての最善をすり合わせのことを「Sheared decision making」と呼んでいます。
つまり、意思決定におけるプロセスを共有し、双方が合意のもとに医療を展開しましょう、といったものです。

ODAN

一言の重み

一言の重みは、芸能人でも政治家でも、通訳者でも医療者でも、その他の方でも同じです。
シチュエーションと狙いに応じて「その一言」は、変わってきます。
言葉のプロフェッショナルである通訳者は、「その一言」の重みを知っています。

平均点を上げる

一言の重みを知っている通訳者は、全体的に平均点以上が目標とされています。
このあたりは、医療とも似ています。

手術が100点でも、麻酔が30点、術後管理が20点では話になりません。
平均点で、80点以上を目指すのがよい通訳とされています。
医療においては、80点でもよいのかもしれませんが、常に100点を目指しています。
これは、通訳者も同じです。

まとめ

  • コミュニケーションエラーは、どんな職種においてもテーマの1つです
  • 特に重要な会議や病状説明などでは、通訳者のように言葉を選択する必要があります
  • ただし、言葉の選択よりも対象の目的とするシチュエーション(理解度など)にマッチさせることが重要です

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  • この記事を書いた人

R-NURSE

関東地方の総合病院で働いている、臨床看護師です。救急系の集中治療室を経て、現在総合診療内科勤務です。診断とか研究とか、投資とか興味は色々です。

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